ほれ、たくさんあるから喰ってけ。
うわあ最高、ありがとう! とウニをバキバキっと割ろうとしたら、
いやいや、それでもいいんだけど、俺たちはこうするんだな、とSさんがウニのさばき方を教えてくれた。Sさんは朝一番で網地島(あじしま:石巻の沖合の島。ネコで有名な田代島の隣の島)から新鮮なウニを発泡スチロールの箱いっぱいに取ってきてくれた地元の人。
口の周りの殻に穴をあけて、もやもやしたものを取り除くだけ
以下、Sさんが教えてくれたトゲトゲ生ウニのさばき方。
まず、ウニの下側、殻を切り取る辺りの刺を、ハサミの背を使ってごりごりして取り除く(というかガリガリと削っていく)
下準備はこれで完了。続いて口の部分を取り外す。割り箸を突っ込んでテコみたいにして割って外してもいいし、ハサミで丸く切り取ってもいい。
口の周りの殻を外したら穴を広げる(ハサミで切るなら最初っから大きめに切っておいても構わない)
すでにウニの殻にぽっかり空いた穴からは、だいだい色のおいしそうなウニが見えている。でも焦っちゃいけない。
「ちょっと、水が入ったボウルと割り箸貸して」
だいだい色の美味しそうなウニの房と房の間にある、黒っぽくてもやもやっとしたものを、Sさんは割り箸を使って丁寧に取り除いていく。箸に引っ付いたもやもやを水で洗っては、黙々とまたもやもやを取り除く。
「ほれ完成。このまま喰ってもいいし、ウニの身をお皿に取り出して食べてもいいし。まあ俺たちはこのままだけどな」
実食。うま〜〜〜〜〜〜い
お魚屋さんやスーパーなんかで小さな木の皿にキレイに盛りつけられたウニは、身が崩れないように明礬を掛けている。だから独特のえぐみいうか苦みがある。でも剥きたてウニだからそんな余計な薬みたいな味はしない。なぁんてアタマが知ってるような余計な知識なんか必要ない。穴があけられた壷みたいなウニから引っ張り出すようにして食べる「ぐちゃぐちゃ」のウニは、
うま~~~~~~い
「ほれ、今度は自分でやってみな」
もう一個渡されて、ハサミで穴あけて、黒っぽいもやもやっとしたものを取り除こうとしていたら、Sさん、またしても「俺たちはこうだけどな」と、さらに新技披露。
新技というほどのことでもない。黒っぽいもやもやを丁寧に取ったりせずに、だいだい色の身と和えるようにして、そのままぺろり。黒っぽいもやもやと身をグジャグジャかき混ぜて食べることもある、とまでおっしゃる。
ちょっとこわごわ、黒っぽいもやもやも一緒に食べてみたら、これまた
うまい、うまい、うま~~~~~~い
黒っぽいもやもやを取り除いたものは、本当にピュアなウニの味。黒っぽいもやもやに和えて食べたのは、それにグルタミン酸の濃厚な味が加わる。
天然のウニを喰ってるのに、グルタミン酸なんて言うなよ。
はい、ごめんなさい。だけど、黒っぽいもやもやはウニが食べてる昆布が半分溶けて、味が凝縮されたまさに「うま味」のかたまり。しかも微妙に海藻のコリコリした感じも残っていて、ふわふわのウニの身と海藻の風味と食感がぐるぐると、すごいことになってしまっておるのでありました。
トゲトゲ生ウニの漁師風さばき方。ウニの殻の中に海の恵みのうず潮を実感したの一席でございます。