空を、とにかく空を見てほしいと思う昼下がりでした。
このドライブでご一緒したいわき市在住の方は、自分の母とほぼ同年代で、「話が合うわね」なんて言っていただいて、いろいろおしゃべりしましたが、震災の以前には、森林浴を兼ねて川内村のいわなの郷を訪ねることがよくあったそうです。
「それが震災で原発事故でしょ。ここがオープンしている話は聞いていたから、ぜひ来てみたかったのよ」
沢沿いにしげっている木立の葉と葉の隙間から差し込んでくる夏の日差しと、淡い緑を透き通して届くやわらかな光が交錯する下を、清冽という形容詞そのものの沢の水が弾けるように流れていきます。この場所に到着するまでの間、沢と緑の美しさに、クルマの中で何度も歓声があがるほどだったので、彼女の言葉が自分の感じたものと一緒になりました。
駐車場がほぼ埋まるほど多くの人が訪れていました。人気のスポットなんですね。いわなの郷には釣り堀もあって、大きなイワナが入れ食い状態。1分の間に誰かが1匹釣り上げるくらいの驚きのペース。(釣らなくてもいわな料理は頂けます)
見てください、この空の青さ。ここは線量は大丈夫なんですよ。2013年には線量を確認の上で再開しているんですから。だけどね、いろんなところに設置されているでしょう、線量計。あれは信じられないんです。だって、自分たちで計るのよりもずっと低いの。ずっとよ。だからね、信じられない。
なつかしい味だったわ。昔といっしょ。昔は子供たちや孫達ともよくも来たのよね。
その味わいは、あっさりとして滋味深いものでした。お刺身を一切れ頂いたら、コリコリしていてもう最高。配合飼料で育てるともっと脂身が強くなると思うのですが、養殖なのに自然のイワナの味がしました。
放射能を心配する気持ちと、思い出の場所で昔と同じように過ごしたい気持ち。切り分けることなどできないのです。切り分けることなどできないのに、それを強いられることが苦しいのだと染みてきます。それだけあの事故は罪が深いということです。二度と繰り返してはならないということです。