「蟷螂の斧」(トウロウ=カマキリのオノ)というのは、自分の弱さを省みずに強敵に挑むことという意味で、はかない抵抗といったニュアンスがあるのだけれど……。
線路沿いの道のフェンスの上で出会ったカマキリの子。この子は勇猛果敢、あっぱれなおチビちゃんだった。感動してしまったくらい。
(一瞬の強い日差しに彼の影がくっきり際立ったせいで、オートフォーカスのピントが影ばかり拾ってしまってピンぼけ……言い訳にならないか……)
ちょっと写真と撮らせてねとスマホを向けると、しばし、じーっと見つめた後、ささささっとこっちに走ってきた。
ちょっと立ち止まるや、武器である斧(カマキリだから鎌か)をぺろぺろっと手入れして、またささささっと向かってくる。
フェンスの縦杭まで来ると、杭の上に駆け上がってきて威嚇する。最初はスマホに挑みかかっているのだと思っていたが、明らかに人間の方を狙っている。
「来るなら来やがれ!」みたいな
でも、向かってきたのはキミの方なんだけどね……、なんて話は問答無用で、鎌を振り上げ続ける蟷螂クンなのでした。
電車の時間が迫ってなければ、もっと遊びたかったのだが、と思いながら時節柄、一瞬別のことがアタマの中を駆け巡った。
たとえ蟷螂の斧と揶揄されようとも、自分の小さな武器を振りかざすべき時というものは必ずあるだろう。もちろんそれは、神風特攻隊とか玉砕(全滅すべく突撃する)ということではなく、そんな歴史への理解を踏まえた上での行動として。
勇猛果敢なカマキリくんみたく、私たちも脱皮の時期を迎えつつあるのかもしれない。