お雛様の前でにっこり笑うこの子は私の娘、当時小学3年生
私の実家のぴいちゃん(曾祖母)に買ってもらったオルゴール付の雛飾りと一緒に
まんまるほっぺをピンクにさせて
シャッターを切り私は携帯のカメラにそのまんまるほっぺを収めた
写真の日付は「2011年3月3日」
そう、東日本大震災の1週間前の写真だ
これが私の携帯に残された、震災前の最後の映像となる
まさか
この1週間後
この子の生死もわからない状況になろうとは
世界中の誰にも
想像できなかった
だから
おひなさまがくると苦しくなる
カウントダウンが始まる
東日本大震災まで
あと7日
6日
5日
4日
3日
2日
1日
・
・
・
24時間を切りました
2時46分、地震発生の時刻です
黙祷
鳴り響くサイレン
3時25分
我が家の時計が指示していた津波到達時刻
再び黙祷
まためぐってくる、そのとき
また思い出すあの日の天気、空気、空、感覚、心拍数
きっと何年過ぎようと
何度繰り返そうと
このカウントダウンが
被災者一人ひとりの中で開始される
決して色あせることなく
昨日の事のように
鮮明に
娘の大好きな雛飾りは
この日飾られたのを最後に
2週間後には
首だけになったお内裏様が
がれきの中から発見される
それはもうみごとなくらいバラバラな状態で