岩手県・岩泉町にある日本三大鍾乳洞のひとつ「龍泉洞」。日本一透明度が高い地底湖があることで有名である。先月30日、その地底湖を見に龍泉洞を訪れた。
龍泉洞について
龍泉洞は、秋芳洞や龍河洞と並び、日本三大鍾乳洞にひとつに数えられている。
鍾乳洞の長さはわかっているだけで3,631mあり、調査が行われていない部分を含めると5,000m以上あるのではないかと言われている。観光客にはそのうち700mが公開されている。ちなみに日本三大鍾乳洞は、ケイビング協会初代会長が力を入れて調査した3つの鍾乳洞が三大鍾乳洞と呼ばれるようになったとのことである。
龍泉洞の最大の見どころは「地底湖」と言ってもいいのではないかと思う。その透明度はなんと41.5m。これは日本で一番、世界でも有数の透き通った水である。透明度とは、直径30cmの白色円盤を水中に沈めて見えなくなる深さを示しており、海や湖の水の透明さの度合いを示す数値である。透明度が高いことで有名な北海道の摩周湖の透明度は28m(※)と言われている。
(※)平成3年度、環境庁の第4回自然環境保全基礎調査・湖沼調査 対象湖沼一覧による。
龍泉洞を歩く
龍泉洞は太平洋から約20㎞ほど内陸にあり、宮古市から車で約1時間ほどで行くことができる。洞内への入口は渓流のそばにあり、川を挟んで反対側には1967年に発見された龍泉新洞がある。有名な地底湖は龍泉洞の方にある。
龍泉洞の入口は崖にぽっかりと空いている。高さは2~3m、幅は大人が2~3人通れるほどの小さなものである。入口に架けられた鉄製の小橋を渡ると、神秘の地底世界が始まる。
鍾乳洞を見る際に注意してほしいのが服装。洞内は年間を通して気温が10度前後となっている。夏に短パン、半袖で行くと少し寒く感じるかもしれない。長袖の羽織るものを持っていくことをおすすめする。ヘルメットやヘッドランプなどといった本格装備は必要ない。
鍾乳洞に入るとすぐに、綺麗な水の流れがある。これが噂の地底湖なのだろうかと思ったが、冷静に考えてみると地底湖がこんなに小さいわけがなかった。これは「長命の渕」と呼ばれている地底を流れる川であった。
長命の渕の先は、百間廊下と呼ばれる細長い岩間の通路が続く。幅は大人1~2人が通れるほどだが、高さは結構ある。少しドキドキしながら細長い通路を歩いて抜ける。ときおり天井から水滴が落ちてくる。ちょっとしたインディジョーンズ気分を味わうことができる。
百間廊下を抜けると少し道幅が広くなっている「白亜宮」と呼ばれる場所がある。公開されている鍾乳洞のほぼ中間地点にあたり、ほかには「長命の泉」、「隠れ水」といった透明度の高い泉などもある。
白亜宮から更に通路を先に進むと月宮殿などがある。このあたりはライトの光が赤、青、緑などの色に刻々と変化し続け、洞内をカラフルに演出している。
月宮殿の前の通路を抜けたところに長い階段がある。階段はこの先にある地底湖からの帰路となっている。往きは順路に従って直進する。まっすぐ行くと、いよいよ3つの地底湖が続くエリアとなる。
地底湖は第1から第3まである。竜宮渕を抜けると第1地底湖、第2地底湖がある。透明な地底湖の底をのぞき込んでいると、吸い込まれそうな感覚になる。
写真撮影を試みたが鮮明なものがとれなかった。残念。
第2地底湖を見た後にはいよいよ龍泉洞最大の見どころ、第3地底湖があらわれる。日本一の透明度と言われる41.5mは、第3地底湖の数値である。この地底湖の水深はなんと98m。のぞき込むと、ぞっと背筋に寒気すら感じる深さである。吊るされたライトに照らし出される地底湖を見ていると、地下空間という特殊な環境の影響もあるのか、まるで自分が深海の世界にいるような錯覚におちいる。神秘的な地底湖に時間を忘れ、20分以上見入ってしまった。
第3地底湖を見た後は、竜宮渕付近まで帰路専用通路で戻る。この道は昇り降りが激しく約270段の階段となっている。平坦な道を歩きたい方は、来た道を戻った方がいいかもしれない。
竜宮渕からは来た時と同じ道を通って入口へと戻る。
龍泉洞の魅力
これまでにもいくつかの鍾乳洞を見てきたが、龍泉洞にはそれらとは異なる魅力がある。鍾乳石が豪華絢爛な秋芳洞も素晴らしいものがあったが、龍泉洞の透き通った地底湖もぜひ一度は見ておきたい。世界有数と言われる透明度は伊達ではない。
コウモリが舞う洞内はちょっとした探検気分も味わうことができ、小さなお子さんも楽しめるのではないだろうか。
まだ調べられていない場所も多く、龍泉洞の全貌はわかっていない。
調査の結果、見つかったものの公開されていない地底湖もある。現在、未公開の第4地底湖は深さが120mもあるという。
いつの日か、さらに奥深くまで公開されることを期待したい。
龍泉洞は、今後何が発見されるかわからない神秘的な鍾乳洞である。
龍泉洞
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji