【東北の名所】民話の里・遠野 ~その1~

遠野ふるさと村にて

「民話の里」と言われる岩手県・遠野市。柳田国男の著書「遠野物語」は、この地方に伝えられていた民話を元に書かれています。古き良き日本の田園・農村風景を今に伝える遠野。

6月の初め、遠野市を訪れた際に見てきた同市の観光スポットをご紹介します。

遠野ふるさと村

遠野でまず最初に紹介したいのが「遠野ふるさと村」。JR遠野駅から約12㎞と離れているものの、古き良き遠野の山里風景・暮らしを疑似体験できる、いちおしの場所である。

遠野ふるさと村は遠野の山里を再現して、平成8年に作られている。広さは東京ドーム約2つ分。敷地内には曲り家と呼ばれる住居や田畑などがある。

NHKの大河ドラマ「竜馬伝」を始め、数多くのドラマや映画のロケでも使われている。そのせいか、最初は「映画村」のような「作られた施設」という目で見ていた感があった。しかし、1軒の曲り家で休んでいる時、ふるさと村スタッフのおばちゃんと雑談をしていると「遠野ふるさと村は、もともとこの地にあった集落の田んぼや水路などを基本的に利用、再現して作られており、曲り家も江戸時代後期~明治中期にかけて建てられた建物を別の場所から移築してきたもの」と聞き、村を見る目が一気に変えられた。「徹底的に見てやろう!」とスイッチが入る。

ふるさと村を歩く

遠野ふるさと村へは、車で訪れる。ちなみに公共交通機関としては、バスが遠野駅から約1時間に1本あるようだ。

到着すると、ふるさと村入口にあるビジターセンターでチケットを購入し入場。
入るとすぐに2つの橋が架かっている。どちらの橋を渡っても林間を少し歩いた後に同じ場所にでるが、右側の方が歩く距離が短く、途中に自然資料館がある。

林を抜けた所には門がぽつんと建っている。門の向こうには、再現した遠野の風景が広がっている。中心に田んぼがあり、それを囲むようにぽつぽつと茅葺の「曲り家」が建っている。私が訪れた時、あぜには花が咲き乱れ、田には植えられたばかりの苗があった。朝、オープンと同時に入ったために人もほとんどおらず、静かな遠野の風景が広がっていた。

「曲り家」は山里風景に溶け込むように建っている。
「曲り家」とは、人が住む母屋と馬小屋が一緒になったL字型の住居のことである。

曲り家(まがりや)とは、岩手県南部領地方に特徴的な、伝統的農家の建築様式である。母屋と馬屋がL字型に一体化していることから、「曲り家」の名を持つ。
一般的に、東側が台所で、南側に「うまや(厩舎)」が母屋の下手に接続して突出し、台所の竃から排出された暖気がうまやに流れ込み、飼育されている馬を温める仕組みになっている。

引用元:曲り家 - Wikipedia

曲り家の玄関をくぐると、かまどが備えられた土間が広がっており、だいたい決まって左手に馬小屋があった。馬小屋と土間の境は、腕くらいの太さの丸太が2本横に渡されているだけである。馬と人の距離が近い。

曲り家の外観。左側が馬小屋、右側が母屋

土間の右手には母屋があり、母屋には「板の間」と「畳」の部屋があった。一部、中二階のようになっている部屋もある。開放的な縁側があり、これが休憩するにはもってこいであった。亡くなった祖父の家も、やはり茅葺で同じような縁側があった。小学生の夏休み、田舎に帰っていた時のことを彷彿させる心安らぐ空間である。「日本家屋は落ち着くなあ」と改めて実感する。

感心した曲り家があった。写真の川前別家(かわまえべっけ)という江戸末期に作られたものである。この曲り家には、曲がった柱や桁梁等が多く使われている。加工をせず、「木」本来がもつ姿そのままに使用している梁には思わずうなってしまった。「いびつさ」よりもむしろ「デザイン的美しさ」を感じさせるものである。ちなみに川の前に建てられていたために「川前別家」と呼ばれているそうだ。

川前別家の曲がった梁

ふるさと村には紹介した曲り家を含めて、1762年から明治中期にかけて建てられた古民家が7棟ある。その他水車小屋などもあり、「そば打ち」や「染めもの」の体験もできるそうだ。村内にある曲り家には、地元の方やふるさと村のスタッフの方がいる場合もあり、話を聞くこともできる。

「遠野ふるさと村」。少し交通に不便な場所にあるけれど、遠野に来たからには、ぜひとも訪れてほしい場所である。

<【東北の名所】民話の里・遠野 ~その2~ へ続く>
※その2では、観光客の定番スポット「カッパ淵」などを、ご紹介します。

遠野ふるさと村

100年前もこのような光景が広がっていたのだろうか

参考WEBサイト

Text & Photo:sKenji