謎に満ちた深海魚リュウグウノツカイが生きたまま水族館に運ばれたとのニュースが飛び込んできた。秋田県で見つかったリュウグウノツカイは男鹿水族館GAOの水槽に移されているという。朝日新聞デジタルとMSN産経ニュースが伝えた。
細かい発見場所について、朝日新聞は「男鹿市北浦入道崎の畠漁港内」、産経新聞は「秋田県男鹿半島沖の日本海」と違いを見せてはいるが、いまはそんなことはどうでもいい。海岸に打ち上げられて話題になることは毎年数回あるものの、生きて泳ぐ姿が見られたのは数えるほどしかない。生きた姿を直接見られること自体が、極めて貴重なことなのだ。
タイミングが悪いことに、運び込まれた男鹿水族館GAOは、1月31日までメンテナンスのため休館中という。リュウグウノツカイはかなり弱っているということで、何とか水族館のオープンまで、いやいや元気に回復して、日本海に帰れるその日まで頑張ってほしいものだ!
過去の生きたリュウグウノツカイ映像
長崎新聞の過去記事によると、2010年1月9日、長崎県平戸沖の定置網で捕獲された体長約3.8メートル、体重約35キロのオスが佐世保市鹿子前町の九十九島水族館(海きらら)の大型水槽で一般公開されたことがあるという。
この時の動画が残されている。
巨大魚リュウグウノツカイを公開 海きららで一瞬の雄姿
たぶん地元の漁師さんが船上でつぶやく「こな太かとの泳ぎよったの初めて見たですばい(こんな大きいのが泳いでいるのは初めて見ました)」という声がリアル。赤い背びれをしきりにゆらめかせている。
水族館の大水槽に移されたリュウグウノツカイは、弱っている様子で水底に転倒した状態。背びれは動かすものの泳ぐことはできない。
ダイバーが水槽に入ってサポートすると、長い体を垂直に立てた状態で、背びれを揺らめかせて泳ぐ。空に昇って行くかのようなその姿、映画「千と千尋の神隠し」のハクを思い出させる。ハク、死なないで。
しかし、おそらく日本で初めて水族館の水槽で泳いだリュウグウノツカイは34分後に死んでしまったという。
秋田のリュウグウノツカイの健康と長生きを祈ります。
ちなみに…
深海魚であるリュウグウノツカイが現れるのは大地震や天変地異の前ぶれという説があるが、関連は認められていないとか。深海魚とはいえ、本種は海の中層をただようように泳ぐらしいので、スロースリップやアスペリティの引っ掛かりなどプレート地震の震源域で起きていることを感知しうるかどうか、微妙な感じがする。
天災の前兆という話のほかに、泳ぐ姿を見ると幸運に恵まれるとか、古くは人魚と見間違えられていたなど、リュウグウノツカイにはさまざまな言い伝えがある。珍しい魚ではあるが、古くから人びとと関わりのある生物だったのだろう。
Video of the Oarfish, Regalecus glesne
こちらには天然の海で泳ぐリュウグウノツカイの姿も。ひれとからだをくゆらせるようにして昇って行く姿はかなり勇壮。
紹介●井上良太
上の動画の解説は、篠原修司さんのページでどうぞ。