「晴れていれば見えるんだけど」
なんて、富岳百景のようなセリフはなかったけど、
小学校の頃、図工やテストを学年ごとにまとめて入れた大きなファイルから、
引っ張り出してきて見せてくれた。
5年生の時の富士山の日、図工の時間に描いたものらしい。
だから、もう2年半くらい前の作品。
富士が見える場所に住んでいると、生活の中に富士山が自然と入り込んでくるようだ。ふだんはそんなに意識していないのに、ちょっとした瞬間に「あゝ」と小さく声を出して遠くを見つめてしまう。
東北とか九州とか、富士が見えるはずのない場所に行った時にでも、
ふと、雲の向こうに白い三角形を探したりしているくらいだから、
自分も十二分に富士山が見える土地の人になったということか。
東北からこども達を招待した時には、
富士が見えるとバスの中が騒然となる。
みんなカメラや携帯を持ち出して、争うようにして富士山を撮っている。
世界文化遺産になった富士山、
これからも、富士が大好きなみんなのことを、よろしく頼むよ。
●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)