僕の地元は兵庫県・尼崎市です。大阪、神戸の2大都市に挟まれた尼崎は、都会的雰囲気と下町情緒が入り混じった独特な町。あまり観光地というイメージはありませんが、何かと見どころが溢れています。このシリーズでは、尼崎を離れて久しい僕が、地元・尼崎の魅力を掘り起こしてみます!
今なお活気溢れる商店街
「商業の街」と言われる尼崎。市内南部にある阪神杭尼崎駅~出屋敷駅の付近には、尼崎中央・三和・出屋敷商店街、通称「三和商店街」という名の巨大商店街が形成されています。
「今日び商店街なんて流行らないのでは?」と思ってしまいますが、侮れません。三和商店街の商店数はおよそ600店。かつては地元ゆえにそれが当たり前と思っていました。しかし、成人した今にして思えば、全国どこを探してもあれほどの広さを誇る商店街はちょっと見あたらない気がします。
軒先でやりとりする八百屋、魚屋、豆腐屋といった個人商店が元気なのも特徴です。店先には商品が並び、段ボールの切れ端に手書きで値段が書いてあったりします。なかにはレジが無く、釣り銭の入ったカゴが吊るされている店も。スーパーに行ってしまえば何でも揃う時代だけに、こうした対面販売のスタイルは貴重かも知れません。奥さんが自転車を押していたり、おばあちゃんがシルバーカートを押していたり。たまに帰省すると、そんな光景を今でも見かけます。 一方で、マクドナルドやケータイショップといったチェーン店まで展開しているのも見逃せません。こういった要因もあり、シャッターが降りているお店は他の地方と比べても少なく、客層の世代交代もうまくいっている印象です。
日本一早い阪神タイガース優勝祈念マジック点灯式
この商店街の特徴のひとつに「日本一早く阪神の優勝のカウントダウンが始まる」というものがあります。阪神とはプロ野球チーム・阪神タイガースのこと。本拠地はおとなり西宮市ですが、この商店街でもおらがチームの勢いで応援しています。 毎年プロ野球開幕直前の3月下旬になると、商店街では「日本一早い阪神タイガース優勝祈念マジック点灯式」が行われます。本来、プロ野球の優勝マジックとは、他の5球団の自力優勝の可能性が無くなった時点で、初めて首位のチームに点灯する優勝カウントダウンのようなものです。が、商店街ではわざわざ独自の計算式を用いて、開幕前より優勝のカウントダウンを始めてしまいます。
当然、毎年阪神が優勝するはずも無いので、カウントダウンむなしくシーズンを終えてしまうことが大半。この儀式を行っている関係者でさえ「こんなあほらしいことして勝てたらえぇけどな。」と自虐気味に笑っていたのが印象的です。 それでも、この儀式は関西や阪神ファンの間では有名で、儀式のあとは関西ローカルのニュースにて報道されるまでがお約束。「こんなあほらしいこと」と言いますが、「こんなあほらしいこと」に本気で取り組める商店街ですから、「まぁえらい元気やなぁ」と思ってしまうわけです。
謎の虎キャラクターも阪神を後押しします。 子供の頃から印象的だったのは、アーケードの天井に吊るされているキャラクター。アーケード上がレールになっており、そのレールに沿って動くキャラクターに、当時はワクワクしたものです。ただ、キャラクターと言っても、当時は薄汚い動物のぬいぐるみだった気がします。
ところが近年、阪神優勝祈念儀式が有名になり始めた頃から、キャラクターたちは阪神タイガースにちなんで虎を意識したもの(?)になり、見た目まで綺麗にされるようになりました。商店街のエリアによってキャラクターもまちまちながら、共通するのは「虎っぽい」ということ。君たちはいったい誰ですか。 もちろん吊るされていない、商店街名物キャラクターもちらほら。阪神の公式マスコットにはトラッキーというキャラクターがいますが、なかには若干(?)パクっているようにも見えるキャラクターまで。もはやツッコミ待ちとしか思えません。
僕個人としては、残念ながら阪神は嫌いです。ただ、商店街としてここまでユーモアに富んでいると、どこか憎みきれないのも事実です。
盆や年末は大混雑。
僕の実家では、盆や年末になるとこの商店街へよく買い出しに行きます。どうせ買い出しをするなら、大型のスーパーや、大阪・神戸などのデパートでも良さそうなところですが、なぜかこの商店街に行くのが恒例でした。 我が家だけに限った話ではなく、そういった時期の混み具合は相当なものでした。それに加えて、八百屋や魚屋から響く威勢の良いダミ声、電動おもちゃがガチャガチャと音を立てるおもちゃ屋さんの軒先、アート性皆無のごちゃごちゃとした看板やポスター・・・、などなど。
このコテコテの雰囲気は一見すると騒々しいように見えますが、僕は意外と落ち着いてしまうのです。関西の中でも特に「人情味が溢れる」と言われる尼崎。この商店街には、その要素が凝縮されている気がします。