“加速装置”を搭載した勝率100%のじゃんけんロボ

東京大学・石川奥研究室がついに夢のロボットを完成!そのロボットの能力とは『じゃんけんでの勝率が100%』だって!

ついに予知能力まで備えたロボットが完成したのかと思いきや、各紙の報道をよく読んでみると…。◇「必ず勝つじゃんけんロボット」を東大が開発(WIRED NEWS 2012年6月29日:原文は『Rock Paper Robot: You Lose, Every Time』06.27.12 5:59 PM)

◇東大開発の勝率100%じゃんけんロボ、高速の「後出し」を実現(ロイター 世界のこぼれ話 2012年07月02日 18時05分)んんん、後出しじゃんけん?

しかも記事によると、「将来は人間との協調作業に応用できると期待」なんて書いてある。おいおい、それはないだろう!

後出しは相手を騙すズルイやり方。そんな詐欺まがいの能力を身に付けたロボットが人間と協調作業するなんてありえない!けしからんプンプン!などと考えつつ当の「東京大学 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 ・創造情報学専攻/工学部 計数工学科 石川奥研究室」のホームページで調べてみました。

結果から言うと、「わたしの早とちりでした。ごめんなさい」。この研究室のコンセプトは、センサ情報処理における並列処理の利用。背景にあるのは、現実のリアルワールドが原則的に並列の演算構造を有しているのだから、同等の構造を工学的に実現することで、従来のシステムをはるかに凌駕するシステムの構築が可能であり、結果としてまったく新しい情報システムを作り出せるはずという信念。

難しい話より、YouTubeにアップされた実際のじゃんけんロボの動画を見た方が話が早いだろう。リンク=Janken (rock-paper-scissors) Robot with 100% winning rateまず、ロボットの指の動きに驚かされる。さらに驚きなのが、人間の手がじゃんけんの形を作ろうとし始めたところで高速に画像を解析し、ロボの指にフィードバック。人間がじゃんけんを出した時点では、その手に勝つ手をロボットの指が出しているということだ。

JR石巻駅にいるサイボーグ009

石ノ森章太郎の名作『サイボーグ009』に登場する加速装置が実現されたと言っても過言ではない。じゃんけんロボの画像処理速度は1ミリ秒。人間の知覚をはるかに超えるスピードだから、まさに相手が止まって見えることだろう。

となると、たしかに人間との共同作業での可能性は大いに広がると見ていい。ちょっとしたしぐさや、言葉を発する瞬間の口の動きを画像処理して、相手の“気持ちを汲む”ことができれば、ツーと言えばカーな究極のコミュニケーション・インターフェイスが実現できるかも。

石川奥研究室では、研究成果の動画によるアウトリーチ(普及)にも積極的だから、興味のある方はホームページにアクセスされてみては。◇リンク

東京大学 情報理工学系研究科 システム情報学専攻 ・創造情報学専攻/工学部 計数工学科 石川奥研究室YouTube動画「Janken (rock-paper-scissors) Robot with 100% winning rate」

近い将来、ぜひとも加速装置を奥歯の横に実装する技術も開発して欲しいものですね、カチッ。