「3番 ファースト 美加」というアナウンスを聴いて一瞬誰だと思った。しかし、よく見てみると電光掲示板には、つどい、友綺、美加、志乃・・・
実はこれ、2009年に発足し、今期で3年目を迎える女子プロ野球リーグ(GPBL)の試合における選手名の表記なのだ。過去2シーズンは一般的な野球と同じく姓による表記だった。しかしどうやら、今シーズンからは新たな試みとして、全選手、名前での登録となった。
男子のプロ野球においては「イチローフィーバー」を筆頭に、今であれば鉄平(楽天)や英智(中日)など、時折名前での選手登録が見られる。しかし、球団や監督の方針として「名前を売りたい」「同姓選手との混同を避けるため」などの理由がなければ、普通は姓による登録である。そういった中での、女子プロ野球の試みは思い切った試みと言えるだろう。 そもそも、女子プロ野球とは戦後の「女性の社会進出」の象徴として誕生した。当時は実業家が興行として女性に野球を求めたものであり、レベルは決して高くなかった。また、能力以上に「容姿端麗が重視された」と、資料には記されている。それでも当時のベンチャー企業や化粧品会社などが中心となって参加し、最盛期は20を超えるチームがしのぎを削った。大島雅子といった抜群の能力を誇る選手も出てきたが、結局は興行として長続きせず、わずか2年で幕を閉じている。
こうした背景を踏まえながらも、「女子野球の裾野拡大と活性化」を掲げ、2009年に発足。代表の片桐諭、株主のわかさ生活が中心となり、運営しているのが現行の女子プロ野球リーグ(GPBL)である。無論、レベルは男子のそれと比べれば劣る。しかしながら、男子と同様の球場を使用し、中にはスタンドインでホームランを放つ選手も出てきている。(上記の「美加」こと大阪・小西美加選手がそうである)
実力主義で非常にパワフルなのだ。現状、兵庫スイングスマイリーズ、京都アストドリームス、そして今季より参入した大阪ブレイビーハニーズの近畿3チームのみの参加であるが、3年目の今もなお、発足時の予想を上回る集客を維持している。 今回の試みも親しみやすさの一つかも知れない。今はまだ、名前でのアナウンスに違和感を覚えるが、時間の問題だろうか。今後の活性化が期待される。
(今期より大阪ブレイビーハニーズに所属する「美加」こと小西美加。エースとして自らもマウンドに登る。)
◇参考ページ◇
(公式HP)
(Youtube)◇ 参考資料 ◇
(桑原稲敏 1993年 風人社)