2015年の石巻川開き祭り、日差しが肌をローストする猛暑日クラスの昼下がり、金華山の蛇（龍）踊りやお祭りのパレードを見に集まった大観衆が、数少ない日陰を求めていた頃、会場上空をジェット練習機T4が2機駆け抜けた。すかさず会場全体に響き渡るアナウンス。いまやブルーインパルスの特別展示飛行のスタート時間が目前に迫っていたのであった。

空自隊員のアナウンスがブルーインパルス機6機のパイロットの紹介や、飛行内容について簡単に解説を行うこと数分、定刻の13時15分、「みなさま、東の方向、市役所方面をご覧下さい」の声に続いて6機のブルーがスモークを吐きながら祭り会場の空を駆け抜けていった。

数万の観衆が固唾を呑んで、空に飛行機が現れるのを待つ数秒間の静寂。そして視界に入る機影。視界に入るや轟音で祭り会場の空気を震えさせながら頭上を駆け抜けていく6機のT4。急上昇していく姿を見上げる観衆。そして拍手。

子供も大人も男の子も女の子もおじいちゃんもおばあちゃんも、空を見上げて小さく口を開いて、目を輝かせて、そして拍手する。

ブルーインパルスの本拠地は東松島市の空自松島基地。地元、石巻だから石巻人はみんなブルーのことが大好き。たとえ石巻、東松島エリアの住人でなくても、この迫力の低空飛行を見上げる経験をすれば心を動かされてしまうだろう。

編隊、単機で数々の展示飛行で地上の観衆を魅了したブルーが、大空に大きなハートを描いた。2機がそれぞれ描く円弧がハートにつながったところに、もう1機が「矢」を貫く。大空のキャンバスに自在に描くその姿に、観衆は大喜びだった。

孫兵衛船レース、燈籠流し、パレード、蛇踊り、花火大会など見どころいっぱいの石巻川開き祭り。空に思い出を刻む夏の祭りでもあるのです。