大船渡の美しい港の象徴「サン・アンドレス公園」が見つめ続けてきたもの

yumenoshippo01

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大船渡の港は水産業の一大拠点として、また国際貿易港として、さらには豪華客船もたびたび寄港する東北を代表する天然の良港です。そんな大船渡の海岸沿い、魚市場と埠頭の間にそびえているのが、サン・アンドレス公園の展望タワー。

タワーの上から眺めると、太平洋から深く切れ込んだ、まるでフィヨルドのような…、とまでいうと言い過ぎかもしれないけど、とても美しい光景が広がります。深いブルーの海の向こうには対岸の鮮やかな緑。空と海の青にサンドイッチされた緑の帯の中を、白い船が走って行く姿は大船渡湾ならではの美しい光景です。

サン・アンドレス公園は大船渡の海を楽しむ絶景ポイントだったのです。しかし、東日本大震災の津波で1段目の展望デッキ付近まで大きく破壊されてしまいました。

それでも、この場所にはきっと不思議なパワーがあるのでしょう。大船渡出身で地元じゃ知らない人のいない若手ヴォーカル・デュオ「LAWBLOW」が発表した「家に帰ろう」のMVのロケ地はここ。しかも、エンドロールには2011年の7月の撮影と記されているではありませんか!

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 MOVIE | LAWBLOWオフィシャルウェブサイト
www.edgemusic.jp  

いつか家に帰ろう♪
そう繰り返す歌がどうして歌われたのか。MVには片山建設さんやKyokoさんやタカさんが登場します。知ってる人たちが出てくるとつい笑顔になってしまう。だけどそんなことじゃなくて、いつか家に帰ろう♪ そう何度も繰り返す歌がどうしてこの場所で歌われたのか。

♪「前を向いて歩こう」テレビで誰かが叫んでた 変わり果てた景色の何を見て歩けばよかった?…

♪全てを諦めかけた自分 宛のメールが嬉しくて嬉しくてもう進むしかないんだって…

あの頃のこの場所で、「家に帰ろう」という言葉がどんな意味を持っていたのか、この歌が大きな力を持っていた理由(いまもだけど)が、きっとストレートに伝わると思うから、ぜひ聞いてほしいんです、LAWBLOWの歌を。ライブの時なんて絶叫し過ぎて歌詞が聞き取れないくらいなことがいつものことなんだけど、NHKのいわてみんなの歌としても流されていた歌だから、このMVを見てね。たとえ好き嫌いは人それぞれでも、間違いなくしみると思うから。

残念ながら、手すりなどが壊れて危険なため現在では虎ロープが張られていますが、震災前から変わることなく、サン・アンドレス公園のタワーは大船渡の港の側に、街のシンボルとして立っています。

展望台の虎ロープのあたりから町を見ると、見渡す町のあちこちでかさ上げ工事が進められています。大船渡の町のかさ上げは、お隣の陸前高田などと比べるとのんびり進められている印象があったのですが、今年に入ってほんの数カ月での変化は驚くほど。かさ上げの高さを写真で実感していただくのは難しいものではありますが、ご覧いただきたいんです、最近の大船渡の景色を。

手前のグリーンシートで覆われている場所は、工事関係の資材置き場か何かでしょう。その奥の方に電柱の半分ほどの高さまで盛られているのが、町なかのかさ上げです(やはりちょっとわかりにくいですね…)。

この場所にずっと立っていたサン・アンドレスのタワーは、震災で町が大変な姿になってしまった時から、少しずつ片付けが始まり、壊れた建物の解体が進められ、基礎コンクリートが解体されて、更地が広がっていく一方で、仮設の商店街が立ち始め、港周辺の道路の改修も進められて、そしてかさ上げが進み始めて……、といった変化の積み重ねの中、ずっと大船渡の町の人たちの毎日を見詰めて来たんだろうなと思うんです。タワー自身もボロボロになりながら。

傷つきながも町を見守るように立っているサン・アンドレスのタワーを見て、町のひとたちも、こころの中で何かを感じてきたんじゃないのだろうかという気がします。だってこの場所を選んで「LAWBLOW」の2人が歌ったくらいなんですから、震災から4カ月しか経ってないあの頃に。

たぶん地元以外ではほとんど知られていない公園とタワーかもしれないけれど、擬人化して感情移入すると、なんかちょっとね、幼少の頃に読んだ「幸福な王子」の物語を思い出したりしてしまうんですよね。人々に何かを与えたり、伝えたりするためにずっとそこに立ち続けている存在。西日に黄金色に輝く姿なんてとくに! もちろん、物語のエンディングは違った形になってくれると信じています。町の人たちと幸せを分かち合えるようなストーリーに!

サン・アンドレス公園

サン・アンドレス公園。ここは大船渡の美しい景色を一望できる場所。そして、大船渡の人たちが4年間の時間の中で心に抱いてきた、たくさんの思いや感情のかけらが結晶している場所なのだと思うのです。

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